スマートフォンのゲーム「ドラゴンクエストウォーク」(DQW)をしながら車を運転し、男性をはねて死なせたとして、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)の罪に問われた元県立高校教員伊藤啓介被告(46)の公判が15日、名古屋地裁であった。検察側は「通常の交通事故とは一線を画する悪質な事故だ」として禁錮3年6カ月を求刑した。判決は3月15日に言い渡される。
論告で検察側は、被告はスマホの操作を優先させ、「著しい前方不注意の状態で事故を起こした」と指摘。その上で被告が日常的に同様の運転を繰り返していたとも述べた。
被告は2022年5月31日、乗用車で名古屋市内の交差点に進入。左手に持ったスマホのDQWの画面に気をとられ、横断歩道を自転車で渡っていた会社員男性(当時55)をはねて死亡させたとされる。(奈良美里)
「真也さんがいないという深い悲しみが癒えることはありません」
この日の裁判では、事故で亡くなった男性の妻が被害者参加制度を使って出廷。代理人弁護士が妻がつづった手紙を代読した。主な内容は次の通り。
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今回の事件で残された家族の怒りや苦しみを伝え、被告人に対し法律で与えられる最大の処罰を与えて頂きたく、お話をさせて頂きます。
夫である高貝真也についてお話しします。一言で述べるなら、家庭では子どものような人でした。
真也さんが仕事から帰ってくると、子どもいわく「お父さんの巣」であるテレビの前から動かずに「おなかすいた、ご飯ください」と言って、出されたご飯を幸せそうに食べ、誰かが動くと「お父さんにサービスしてジュース、入れてほしいな」などとお願いごとをしてきました。仕方ないなという感じで聞いてあげると「ありがとう」と言ってお菓子を食べたりしていました。長男に「自分で動けば」と言われてしょぼんとするのでどうするのかなと見ていると、私や次男に頼んできました。私や次男がやってあげるとうれしそうで、わがままだけど憎めない、かわいらしい人でした。
命令ではなく、あくまでもお願いで、何かしてあげるたびに「ありがとう」と毎回律義に言ってくれて本当にうれしそうでした。その笑顔が今でも家族の胸に焼き付いていて、消えることは一生涯ないでしょう。
仕事に関しては、本業をするほかに、朝コンビニでアルバイトをしていました。どちらもほぼ休むことなくまじめに出勤していて、こどもたちもお父さん、仕事に関しては偉いねと感心していました。私が出会ったころから、真也さんは写真撮影が趣味で、家にはたくさんの真也さんが撮った写真が残されています。高価なカメラを考えもなしに買って、もう、と思ったこともありましたが、真也さんが生きていた証しです。
事件当日の朝、私が仕事に行…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル